【美人女社長】第1話 バイト先の先輩

武石は高校中退後、アルバイトをしながらその日暮らしの生活を続けていた。
ギャンブルはしない。酒も飲まない。実家暮らし。
タバコは吸うけど、親と同じものを吸ってるから、たまに拝借すればいい。
特に困ることも足りないものもなく粛々と日々を過ごして行く。
 

小さい頃は、夢があった。
宇宙飛行士になりたい。いや、漫画家になりたい。
やっぱり、車のデザイナーになりたい。
お金を稼いでイタリアへ留学したいんだ。
 
今は、ただただピザを配達している。
 
ピザの配達は楽しい。
いかに早く届けるか、どの道を通ったらいいか、抜道よりも大通りの方が早くいける時がある。
たまに注文して来るあの子は、おとなしそうだけど、たるんだTシャツからはみ出してしまいそうに胸がおおきい。首元からちらつくおおきな谷間が見たくて、あの子の注文伝票はみんな我先にと奪い合う。
入れ墨だらけ、半裸で出て来るあのおじさんは、いつも必ず500円チップをくれる。その時の笑顔はとっても優しいし、目の奥に愛情が溢れている気がした。
 
 
明日はバイト先の先輩の家に遊びに行くことになった。
先輩は新しい物好きで、家にはパソコンがあるし、インターネットってやつができるらしい。
インターネットってのが何かわからなかったけど、エッチな画像がすぐに手に入ることは知っていた。
パソコンを持っている人はめちゃくちゃ性欲が強い人なんだと思っていたし、パソコンってのはエッチな画像を手に入れるためのアンダーグラウンドなツールなんだと思っていた。
 
 
先輩の家には3台のパソコンがあって、1台は休みなしに電源が付けっ放しにしてある。
 
先輩の家に着くと武石はさわりたい気持ちを抑えて、ため息をつくように、
「すごいですね」
と先輩に伝えた。
 
先輩は、淡々と武石に言った。
「今どきはこんなの大したことないよ。みんなサーバー建てたりTorentやったり、欲しいもののためにパソコンに電気代をつぎ込むのさ。」
もう一台、パソコンに電源をつけながら続けた。
「ソフトを使えば大体のデータは手に入るんだけどさ。たまーに手に入らないものがあるんだよね。そういう場合は、作るんだよ。」
「…データをですか?」
「データは作れないよ。ソフトの方だよ。」
よくわからなかったけど、サバを釣るためには竿を買えばいい、タイを釣るためには売ってる竿じゃ釣れない。そんな風に聞こえた。
 
真っ黒な画面に文字列が並ぶ部分を指差して先輩は静かに言った。
「それでさ、簡単だからお前にここの部分を作ってほしいんだよね」
「え!?僕がですか?」
「そうだよ。」
「パソコン。触ったことないですよ!」
「みんなはじめはそうだよ」
 
不安や戸惑い、そして、鼓動が少し早くなる。
 
 
※この物語はフィクションです。
 
第2話へ続く

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